2005年

2014/12/02

弐瓶勉「ABARA」



今年「シドニアの騎士」のアニメ化でブレイクした感のある弐瓶勉の、00年代中盤の作品ですね。同時期に描いていた「バイオメガ」と同質の、「BLAME!」の延長線上にある画風で、「シドニア」から入った人は面食らうかもしれず。

「シドニア」でも人類の天敵となる異形生命体?寄居子(ガウナ)がキーとなっていますが、「バイオメガ」がよりSFの体をしていたのに対して、この作品はより言葉も説明も少なく、話の短さもあって抽象的で映画めいた雰囲気になっています。

グロテスクな描写、ダークヒーローっぽいシルエット、寄居子が白と黒に分かれて争う(漫画全体が白と黒の高コントラストで構成されているといえます)など、弐瓶漫画の濃いところを結集したような感じです。

これや「バイオメガ」で行くところまでいったので、「シドニア」はより分かりやすい物を描こうということになったのかもしれません。「シドニア」も人類の存亡を掛け旅をする物語ですが、こっちは更に何処にも行けない感が強く。

弐瓶作品に特長的なタームの濃さも「至原体」「第四紀連」「禁籠」といった感じで極まっている感じ。特に、物語を決する存在たる「恒差廟」の存在感とその語感は寒気が走るものがあります。

一気に読み終えてみると、「シドニア」で圧倒的な敵として登場する「衆合船」の中での物語のようにも読めるんですよね。一気に訪れる終末の様相といい、黒と白の配合具合(これはそのまま陰陽の文様にも通じるのですが)といい、ひとつの宗教絵巻といってもいいんじゃないでしょうかね。

teamlink_oka at 21:27|PermalinkComments(0)TrackBack(0)