1995年
2014/12/05
貞本義行「新世紀エヴァンゲリオン」
足掛け20年、漫画版エヴァの最終巻が発売されました。第一話が載った少年エースを買った覚えがあるので、本当の最初から最後まで目を通したことになります。14冊で20年というのをどう思うか。長さ=物語の良さ、ではありませんが。
漫画版は多少違うところはあれ、全体としてはTV版→劇場版の流れを踏襲したものになりました。エヴァのキーワードに「補完」というものがありますが、崩れがちだったTV版作画をキャラデザの人によって補完するという意味も込めて、まさに補完だったのでしょう。
長らく、TV版・劇場版のあのラストに納得がいかない人のための補完であった漫画版ですが、その間に新劇場版が始まり、エヴァという商品の拡散が始まり、今やその位置づけは1グッズに後退した感があります。
昨日も別の選択肢として原作から解釈を変えた物語の話をしましたが、同テーマを考えるために別のアプローチを取るのと、バリエーションとして消費し続けるための拡散はタイプが違うと思うのです。
納得のために他メディア・類似作との差異に価値を見出すタイプの消費は、結局その納得するための回路が快楽装置になっているので、物語と自分との対話で価値を見つけることには寄与しないと思うのですよね。手軽ではあると思いますが。
もちろん貞本義行は漫画エヴァ以外の仕事も残していますのですが、一時期トレンドとして巨大な影響力を持っていた人の長年の仕事としては静かな幕引きだったと思います。また新しいものを作ってくれることを願います。
2014/10/24
岩明均「寄生獣」
TVアニメの方も観ていますが、既読だったのでもう一度把握するべく再読しました。アニメもアニメで面白いのですが、漫画の異形感はいまでも全然古びてないですね。漫画の中の服飾とかは古いのに、不思議なものです。
寄生獣を読んでいて感じるキーワードは、「変化」と「他者」ですね。人間に寄生し人間を喰らうパラサイトは、その姿を自由に変化させて人間社会へと溶けこんでいくわけですが、その社会的行動も一種の「変化」といえます。
また作中のキーパーソンの一人が子供を産み育てるわけですが、これもまた一つの変化、変転でしょう。妊娠出産は女性の持つ機能ではありますが、その姿の変貌はやはり自分から違うものになっていくという自覚もあるのではないかと思います。
一方で、昨日までの自分が何者かに変わっていくという変化を経ると、昨日までの自分は実は他者になっているということで、それは明日の自分が他者であると同義でもあると言えるのではないでしょうかね。
人間とパラサイトという他者、男と女という他者、自分と自分がこれからなる存在という他者。僕らは他者に囲まれ、明日には僕自身も今とは違う他者に変化するということを見つめて暮らしていかなければならないのです。
「自分と他者は違う」と拒絶したり、「他者が自分と同じだった」と安易な帰結に陥らず、他者の存在を認め、その存在を受け入れないとしても理解しようと努めようとする姿勢こそ、この作品を名作たらしめているものなのかもしれません。
寄生獣を読んでいて感じるキーワードは、「変化」と「他者」ですね。人間に寄生し人間を喰らうパラサイトは、その姿を自由に変化させて人間社会へと溶けこんでいくわけですが、その社会的行動も一種の「変化」といえます。
また作中のキーパーソンの一人が子供を産み育てるわけですが、これもまた一つの変化、変転でしょう。妊娠出産は女性の持つ機能ではありますが、その姿の変貌はやはり自分から違うものになっていくという自覚もあるのではないかと思います。
一方で、昨日までの自分が何者かに変わっていくという変化を経ると、昨日までの自分は実は他者になっているということで、それは明日の自分が他者であると同義でもあると言えるのではないでしょうかね。
人間とパラサイトという他者、男と女という他者、自分と自分がこれからなる存在という他者。僕らは他者に囲まれ、明日には僕自身も今とは違う他者に変化するということを見つめて暮らしていかなければならないのです。
「自分と他者は違う」と拒絶したり、「他者が自分と同じだった」と安易な帰結に陥らず、他者の存在を認め、その存在を受け入れないとしても理解しようと努めようとする姿勢こそ、この作品を名作たらしめているものなのかもしれません。