1972年

2014/11/01

手塚治虫「ブッダ」

元々は火の鳥・東洋編として企画されていたという「ブッダ」。最近になってアニメ映画化もされているということですがそちらは未見です。漫画を読んだ感想は、とにかく人がコロコロ死ぬという感じの漫画だと思いました。

導入がブッダが生まれる結構前からになり、タイトルから想像して手にとった際はとっつきにくかったりするのかもしれませんが、是非腰を据えて読んでいけばその違和感も氷解していくはずです。

僕らが想像する仏教と言うのものは、既に出来上がったイメージと日本的な美的感覚に彩られているものではありますが、では何故そういう思想が神話でなく生きている人間から生まれたのか、生まれなければならなかったのかというその原風景を描こうとした試みだと思います。

勿論これは手塚治虫の想像と創作であり、実際に出てくる仏陀や仏弟子たちも敢えて史実と全く違う姿で描かれているものが多いわけですが、それでも人が生まれ簡単に死ぬ世界の切迫した説得力は、世界宗教になっていく力の根源を示している気もします。

ある意味で無謀な挑戦ではあったのだと思いますが、それでもこれを残したことで、今も僕らを現実の問題として取り巻く仏教思想と二千数百年前の印度という想像を絶する世界との想像力を結びつける機会になっていると思うのです。

作中で予知能力を持つアッサジのエピソードが通底して作品を支配しており、その予知がブッダやその他の登場人物に苦悩を与えまた導く過程に、素人考えながらとても「仏教ぽさ」を感じたのでした。

teamlink_oka at 23:27|PermalinkComments(0)TrackBack(0)