1963年
2014/10/22
手塚治虫「リボンの騎士」
最近、折を見て手塚治虫の漫画をあれこれ読んでいるのですが、その発端は子供の頃に読んでいたリボンの騎士を再読したくなったからでした。読んでみると想像以上にまったく覚えてなくて自分の記憶力の頼りなさを痛感した次第。
天使の悪戯で、男の子の心と女の子の心を持ってしまったサファイア姫が、時によってそれぞれの心を失ったり取り戻したりしながら冒険を繰り広げる活劇ですが、昭和30年代にこの内容は相当斬新だったと想像されます。
うつろう自分の性と、社会が備えた性差との間の冒険とも言えるし、メルモちゃんにも通じる、繰り返される自分の体の変化への戸惑いと憧れ(それは女性にとっては切実な現実でしょう)が短期間で万華鏡のようにくるくると変わっていくわけです。
他の作品でもそうなのですが、手塚が持つ性への激しい興味と表現の発露は、時代と、少年少女という対象に対しては規格外だったはずで、こういう先人が切り開いたものを今の漫画文化が直接享受しているのだと再確認できるほどに、古くないと思いました。手塚が選んだ表現が漫画で本当に良かったです。
サファイア自身も魅力的ですが、特に魔法使いの娘ヘケートのやんちゃな性格と、その悲劇的な最後は、読んだ人の心に深く刺さったんじゃないかと。
なかよし版の最後は極めてまっとうな少女漫画風にオチが付き、天使チンクの最後の決め言葉まで含めて爽快な読後感がありました。まだ読んでない少女クラブ版や、双子の騎士もいずれ手にとってみたいと思っています。